かもめ日報

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安部公房の「天使」を読みながら思ったこと

 一ヶ月ほど前に新潮社さんから「新潮 12月号」が出版され、それに掲載されていた安部公房さんの「天使」を拝読させていただいている途中です。最後まで読み終えていない段階ですが、読んでいる途中に思ったことをここに残しておきたいと思います。

 

 この「天使」という作品がどのような経緯で発見されたか詳細については分かりませんが、私はこの「天使」を読んでいる途中から思ったことは、安部公房さんはこの作品をこれまで世に出されてきたいわゆる「作品」とは異なる、あるいは一線を引いたものとしていたのではないかと思いました。なぜならば、世に出そうと思えば出せることもできたはずだから。

 そして、この「天使」の五段落目、

『では主観的な説明は抜きにして、逐一に今日一日の出来事をその儘書き述す事にしよう。』

の次の六段落目から始まる内容と、安部公房さん当時22歳ということ、その後の作品(全てを拝読させていただいたわけではないですが)のことを考えると自ずからそう思ってしまいました。

 ただ単に忘れていたということもないではないですが、その可能性は無いですよね。

 新潮社さんはそのあたりをもちろん考慮され、安部公房さんの身内の方の了解を得た上で発表されたのだと私は思っておりますが。

 しかしながら、安部公房さんを知る上での貴重な資料であることには変わりないと思いますし、発表してくださった新潮社さんには大変感謝しております。ただ、「作品」、あるいは「小説」として出してもよいものなのか、安部公房さんが亡くなった今では知る術もありません。

 ご本人が「よくぞこのタイミングで出してくれた」とお思いになっておられるとしたらいいですね。

 
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新潮 2012年 12月号 [雑誌]

新潮 2012年 12月号 [雑誌]